「こんなに早く辞めてしまったら、笑い者だよ」
「minamiならできる、がんばれ!」
あるとき、会社を辞めようと思うと告げると、母からこう言われた。
「ああ、私はこういうふうに育てられたんだなあ」
と、妙に感慨深い気持ちになった。
これまで、「私ならできる」「負けて笑われるのは恥ずかしい」というプレッシャーのもと、それに打ち勝つことが人生の目的になっていたように思う。そしてそれは「できない自分は笑い者になり、存在価値がない」という極端な思考につながっていたように思う。
だいたい、20代半ばくらいまでは勝てることが多かったし、それがプライドにもなっていた。でも私は、27歳のときに大きな挫折を経験した。その挫折を乗り越えてやるという決意のもと、30代に入ってベトナム生活を乗り切った。タフにはなったのだろうが、ものごとを勝ち負けで捉える性格は、変わることがなかった。
協力隊から帰ってきてからも、自分が本当にやりたいこと、誰かのために自分が汗をかけることはなんだろうという自問自答の前に、優良企業に涼しい顔して入ってやろうと奮闘し、それを達成できた自分に酔っていた。自らが勝手につくりだした、他人からこう思われたいという自己イメージにこだわっていたのだ。
「人から認められて、安心感を得る」というサイクルは、うまくいっているときはいいが、うまくいかないときに、こんなはずじゃないともがき苦しむことになる。
思えば、負けまいと奮闘していた20代のとき、「勝っても負けても、私はあなたの味方だよ」と当時の彼女に言われたときには、世界観が変わるほどの衝撃を受けた。たとえ負けても、愛してくれると明言してくれる存在に、はじめて出会ったような気がした。
真面目だね、と言われることも多いが、それは目標を達成しなければ生きる価値がない、という強迫観念から出てくるものだから、無理や無謀につながる。目標を達成できないという失敗が、大げさにいえば死刑宣告のように感じてしまうのだから、目標を無理してでも達成しようとして、空回りして苦しんだり、達成したかのように強がることもある。
では、どうすればいいのか。性格診断テストによると、こんなことが書いてあった。
このタイプは、何と言っても目標を達成する能力が抜群です。ビジョンを語り組織を目標に向かわせるリーダーシップも持っているので、ツボににハマれば大きな仕事をやり遂げるエネルギーを生み出すこともできます。成功成功だけにこだわって暴走しないよう、周囲との調和を保つよう注意しましょう。
時には周りをサポートする黒子役に徹してみたり、社会的な成功など外側のことでなく、自分の内面によって自分を満たす道を探ることも有効です。
このタイプの人は、元々才能がある人が多いのに、地味な下積みを嫌がる傾向があるため、その才能を伸ばしきれないことがあります。より大きな成功をつかむには地味な努力も必要だと理解しましょう。
勝っても負けても、世界は優しいということだと、私は解釈した。目標達成能力が高いことは長所とされるけれど、勝ちを追い求める姿勢は、ほどほどでいい。一見、地味でつまらないことでも、丁寧にする。自分のアピールでなく、人のサポートを心がける。そんなふうに、心がけてみたい。