反応しない練習

我々は日々、反応しまくって生きている。

上司から叱責されては取り乱し、満員電車で足を踏まれれば腹が立つ。恋人の返信が遅ければ不安になり、自動改札で詰まっている人がいればイライラする。すべての元凶が「反応すること」にある。

その対極にあるのが、お坊さん。彼らはなぜあんなにも泰然自若としているのか。ひとつのヒントとして、彼らは「反応しない」プロフェッショナル。そんな彼らのマインドを生活に取り入れれば、楽になるのではないか。

もちろん、人間である以上、出来事に対してまったく反応しないのは難しい。でも、「ああ、反応している」「やばい、ココロ乱れてるな」と意識するだけでもだいぶ違う。

私はここ数ヶ月、この思考を手に入れてから、だいぶ楽になった。特にベトナムにいるときは、反応しっぱなしだった。ブログを読み返すと、そりゃ疲れるわと思うほど、出来事に反応していた。

反応が怒りとなって表現されるとき、こんな思考パターンをたどる。

①出来事(例:恋人からのメール返信が遅い)

②刺激(例:にもかかわらず、恋人は能天気)

③反応

④判断(例:あいつはひどい奴だ。私のことなんて何も考えていない)

⑤行動(例:何なの!?あなたはひどい人だよ!)

こんなことを繰り返すと、扱いづらい人だと思われてしまうし、何より自分がしんどい。

反応しないことを意識すると、人に愚痴を言う回数も減るし、切り替えも早い。おもしろいもので、他人をみていても「ああ、この人はいま、激しく反応しているな」と感じ取れるようになる。

スポーツ選手でも、反応しない(と心がけている)人は成功しているし、逆に反応してしまう人は持っているポテンシャルを発揮しきれていないように思う。イチロー本田圭佑が前者の典型例だろう。一方、日本シリーズの試合中、守備についているときに泣くなど、反応しまくって感情を露わにすることをいとわないでいた清原和博は、薬物事件は抜きにしても、もっとやれた選手だったように思う。ある意味、サイコパスの真反対ではあるのだけれども。

イチロー「人に会いたくない時間もたくさんありましたね。誰にも会いたくない、しゃべりたくない。僕はこれまで自分の感情をなるべく殺してプレーをしてきたつもりなんですけども、なかなかそれもうまく行かずという、という苦しい時間でしたね」

本田圭佑「サッカーって基本的に上手くいかない時のほうが多いです。その度にムカつくし落ち込むし、でも上手くいく喜びを知ってるから、また明日に向けていい準備をしよう。すぐに切り替えて次の勝利、次の成功に向けて頑張ろうとしてきました」

追い詰められるとキレていた原口元気は反応しなくなってから、明らかに成長した。メンタルの成長といってもピンとこないが、反応しなくなると表現すると、よりわかりやすい。その意味で、ナチュナルな鈍感力を持っている人(松井秀喜がそうだと思う)はともかく、凡人は意識的に鈍感になる訓練をしたほうがいい。