【vol26】シリーズ:日本で思ったこと~少子化対策

日本に帰ってきて、どうですか?

その質問に対して、よくこう答えていました。

日本は「子どもが少ない!」

ベトナムはどこに行っても子どもだらけです。村では夜遅くまで子どもたちが外で遊んだり、ハノイでは子ども向けのゲームセンターが大盛況です。当然、妊婦さんも多く、職場では15人ほどいる女性職員のうち、常に1-2人は産休を取っています。取引先に連絡しても、「産休のため、別の者が担当します」と言われることもしばしば。妊婦さんも特に「守ってもらおう」と意識している感じはせず、ごく普通に働き、生活しています。学生もすごく多いので、通学のバスは大混雑です。

統計による出生率は印象より少ない(2013年で1.74)のですが、この1.74という出生率は、日本だと70年代後半-80年代前半にあたります。つまり今のベトナムは、やはり日本でいう「昭和の風景」なのでしょう。ちなみに私が生まれた83年の日本は1.80。村の子どもたちは大体が2人か3人兄弟。私の同級生の70%が2人兄弟、たまに1人っ子か3人兄弟がいるような状況だったので、感覚的な家族構成にも合致します。

どうしてベトナムは、子どもが多いのでしょうか?

ここでは「どうしてベトナムは、子どもを育てやすい社会なのか?」と、ベトナム人の働き方に絞って考えてみます。

理由を考えてみる前の前提として、「ベトナムでは子どもがいる女性が働き続けるのが当たり前」の社会であることを踏まえる必要があります。結婚したから、あるいは子どもがいるから、という理由で会社をやめる人は、100%といっていいほどいません。もっとも、日本も会社という形態が社会の中枢を占める高度成長期以前は女性もずっと働いていたのですから、戦後の日本式雇用形態(男が一生働き、女は専業主婦)の独特さが問題なのかもしれません。

それでは、なぜベトナムは子どもを育てやすいのか?

5つほど、理由を考えてみました。

1.地域コミュニティの存在

ベトナム人儒教の影響もあり、家族を大事にします。基本的に家族が同居するか、近くに住むケースが多いです。加えて(特に村では)誰もが知り合いであり、カギもかけないので、お金をかけてベビーシッターや保育園に預ける必要がありません。家族親戚を含め、みんなで子どもの面倒を見ます。

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地域のお爺さんが子どもの面倒をみる。

2.イクメンの存在

イクメンという言葉が日本でも少し前からありますが、ベトナムイクメンばかりです。

というか、前述の通り男性は働かないので、育児(というかあやし係)くらいしかすることがない。それは裏を返すと、「男性が昼間っから働きもせず、育児をしていても変に思われない」社会ともいえます。

3.女権社会

前述のとおり、ベトナムでは女性がよく働きます。よく働くどころか、家長は女性であり、男性はヒモ同然です。結果、男性が働く家は繁栄します。私のホームステイ先でも、お金に関わることはお母さんに聞かないと何も決まりません。私が入居する日はお母さんが働いており、お父さんが対応してくれたのですが、電気代をどう払うかを決めるにあたって簡単な契約上のやり取りがありました。しかしお父さんは何も決められません。お母さんにも連絡が取れないので、なんとお父さんはハノイに住んでいる22歳の娘さんに電話でどうしたらいいか、聞いていたのです。男性はまるで子ども同然で、それを疑問にも思わない。なかなか面白いやり取りでした。

4.職場のユルさ

女性がメインで働き、かつ男性はヒモでも許されるわけです。その男性(父親)が育児すらしなかったら、女性(お母さん)は、どうするのか?

お母さんは子どもを職場に連れてきます。もちろん託児所などありません。堂々と職場のパソコンを使い、You tubeドラえもんを見せている。それを誰も問題視しないのです。これは会社の理解といった立派な話というよりも、そもそも「大してマジメに働いておらず、邪魔が入っても困らない」程度の仕事しかしていないからできることで、日本でそのままマネしたら、「集中できない!」といった声が出ることでしょう。

日本は、一生懸命レベルの高い仕事をしようとがんばって高度な三次産業ばかりの職場になり、子どもの居場所がなくなったために国が滅びていく。皮肉な話です。

5.社会全体のユルさ

ベトナムは乱暴です。五感にビンビンきます。公共の場で大声は当たり前、子どもを排水溝でおしっこさせたりもしています。マナーという意味ではひどく、生活していて疲れることもしばしばですが、そもそも基本原理として「世話がやけ、不潔で、うるさい」存在である子どもを育てるにあたって、社会の目がユルいのはプラスに作用しています。日本にいて、子どもを持つお母さんが電車で恐縮そうにしているのを見て、なんだかとても不憫に思えました。

「人に迷惑をかけるな」「他人の気持ちになって考えろ」という日本式の教育や、「清潔が一番」という最近の価値観が、子どもを増やすという観点からは、悪い方に出ているのかもしれません。

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いかがでしたか?

ベトナムと日本は似ているところもあるし、全然違うところもある。

両方のバランスを取って、幸せな人生を送りたいものですね。