【vol27】青年海外協力隊に参加するにはいつの時期がベストか?
協力隊に興味があるんです
という大学3年生から連絡をもらった。ハノイの大学に交換留学で来ているそうだ。
彼女は一般企業や国際機関での就職を考えていて、キャリアのひとつとして、協力隊という選択肢を考えているという。
会ってみると、ごく普通のかわいらしい大学生だった。もう10歳も年が離れているかと思うと感慨深いが、時は流れていく。
そこで「新卒時に協力隊ってどうなの?」という話題になった。
こんなことを話した。
「新卒で行くメリットは健康面。体力勝負な面もあるから、より若いうちに行っておいたほうがいいと思う。デメリットは、一般企業に就職するチャンスを逃すこと。もちろん帰国してから一般企業に勤めてもいいけれど、だいたいの人はそのまま大学院や国際協力の道に行きがち。そうすると、若手社会人のうちに鍛えられるメリットを結果的に捨てることになるから」
この点を、もう少し詳しく書いていきたい。
日本の会社に新卒で勤めるメリットは「OJTがしっかりしている」ことに尽きると思う。
今時のことは知らないが、私の勤めていた会社では、1-3年目は「1年生、2年生、3年生」などと呼ばれて、まだまだ半人前扱いだった。会社全体で、このヒヨッ子たちを一人前になるまで面倒みます、という雰囲気があった。
この時期に、先輩から学んだことは多々ある。
「数字は上3ケタしか気にするな。それより下のケタは議論しない」
「仕事はキャッチボール。自分のところに溜めるな、意識的に投げ返せ」
「伝聞情報を使わざるを得ないときは、しっかりメモを取れ。ヒアリング先にも確認を取ってから、第三者に伝えろ」
これらのような「大人の社会のルール」みたいなものを叩きこまれた。先輩社員にとっても、自分の評価の何割かが新人の教育に充てられているのだから、真剣勝負だ。インターンや、派遣社員への教育とは訳が違う。
JICAの職員と接していると、そういった基礎的な訓練がなされてないのだろうな、という人に出会うことがある。そしてそれらは、年をとってからは学びにくい種類の知識だと思う。
もう一つは、協力隊→大学院→国際機関だと、「ビジネスパーソン=商人としての視点が持てない」点だ。
JICAはもちろん、政治家やジャーナリストや学者は、商人の視点を持っていない。
それはつまり、1億円と100億円の違いが、皮膚感覚として理解できないということだ。
1000円の領収書と、100万円の領収書の経費処理を同じ労力を使ってやるから、1億円の不正を見逃すことになる。
加えて、自分の給料の出所が、これも皮膚感覚としてわからない。
自分のような社員がこれだけ働いて物を売ったから、これだけの売上が出て、経費を引くと、利益が出る。そこから税金を納めて、これだけの給料が出る。
このプロセスがわからないから、「国がたった2,500億くらい、出せないのかね」という発言が飛び出す。2,500億円の持つインパクトが皮膚感覚で理解できるかできないかで、ビジネスマインドを持っているかどうかがわかる。
以上、私の結論としては、一般企業、それも1つのプロジェクト予算を見渡せる場所で2-3年働いてから、協力隊に参加することを薦める。あるいは、新卒で協力隊に参加するなら、その後、一般企業に就職することを前提に考えた方がいい。
国際協力という職業をバカにするわけではないが、歴史がごく浅い職業だ。世界的に見て、ものすごくニッチな仕事である。一方、商人は世界中に、それこそ人間が社会生活を営んだ瞬間から、存在している。八百屋さんだって市場で仕入れ、消費者に売り、マージンを得る。立派なビジネスだ。村にも、商人は数え切れないほどいる。国際協力は、人のふんどし(=税金)が前提となった仕事である。新聞記者や教師、学者といった職業にも共通する弱点だが、自分のお給料がどこから出ているのか、彼らは突き詰めて考えた経験がない。だから評価基準が社会常識と違うし、たまに大事なことを忘れているのでは、と思うこともある。
裏を返すと、ぜひビジネスマインドを持った上で、国際協力を職業にしてほしい。
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こんなに偉そうなことを言っているが、しょせん人間は自分のしてきた道を肯定したがるもの。
私の言うことも、割り引いて考える必要がある。
だから、若い人には、ぜひ「大人の意見を聞くな」ということも言いたい。
まずは3年我慢しろ・・若い時期に結婚しろ・・欠かさず新聞を読め・・結局、自分の辿った道を若者に薦めているにすぎないこともある。だから、アドバイスを聞くときに、その人が若い時に経験していないことを言ってくるなら、聞くに値する可能性が高い。
私が若い時にしていなくて、したほうがいいと思うことは・・恋愛だろうか。
恋愛大事、絶対。
ハノイにひとりで乗り込んでいる時点で、立派な大学生だと思う。
協力隊に興味を持ってくれたことも、とても嬉しい。
流行りのアヒル口。