【vol33】どうして東京は働きづらいのか?

一時帰国中に、何人か友達に会いました。独身で30歳前後の人が多く、半数以上の人が新卒から同じ会社で働いている。出身地も職場も東京周辺、という人が多いです。

ただ、ほとんどの人が、なかなか大変な労働環境で生活し、疲れていました。毎日一分たりとも遅刻せず、満員電車に乗って出勤し、サボることなく仕事をこなし、平社員であっても残業や休日出勤は当たり前。ちょっと前の私もそうでした。当然、仕事のレベルも高いものが要求されます。平日、夜8時開始の飲み会に間に合わない、そんなこともしばしばでした。

いまの私は、不衛生でかつ不便で、英語や日本語も通じない。そんなベトナムハノイ近郊・ドンラム村で暮らし、仕事をしています。ですがここには、東京で仕事をしていたときのような「イヤーな感じ」はないのです。表現は難しいのですが、ここでの暮らしは、もう少しカラっとしたしんどさなのです。

どうしてでしょう?どうして東京は、こんなに働きにくいのでしょうか。理由を考えてみました。

あくまでも私は東京の働き方しか知らないので、地方では違うかもしれません。東京と日本全体がごっちゃになっている部分もあるかと思いますが、ご容赦ください。

1.おもてなしのうらかえし

東京は世界有数の都市です。あらゆる業態の会社が存在し、金を払えば、すぐに欲望を叶えてくます。

例えば、「ハリウッド映画を見たい」「アフリカ料理を食べたい」「きれいな夜景をヘリコプターから眺めたい」

こういった欲望をそれぞれ叶えるにあたって、東京ほどコスパのよい都市は他に存在しないと思います。

それから忘れてはならないのは、これらのサービスには、映画を見せるという最大目的以外のサービスが、顧客にとっての快適さにかなり作用するということです。

例えばハノイには映画館はいくつかありますが、快適に映画を楽しむために、はいくつか条件があります。

・空調設備

・椅子の座り心地

・観客のマナー

・音響設備

・トイレの清潔さ

・従業員の接客態度

・電話応対の正確さ

どれもこれも、ハノイは東京とは比べ物にならないほど、劣っています。それなりのシネコン(中間層~富裕層向け)に行っても、収入にマナーが追い付いておらず、携帯は使うわ子どもは走り回るわで、映画に集中できないこともしばしば。

たとえ値段が高くとも、東京の映画館のほうがコスパは圧倒的にいいです。外国人が東京にいて困ることは英語が通じにくいということでしょうが、それでも彼らは、英語が話せる人を一生懸命探してきてくれるはずです。

消費者にとって快適な環境であることは、裏返すと、提供者=労働者にとって過酷な環境になります。

日本では、旅行会社の受付を担当をしている女性にとって、膀胱炎は職業病だと聞いたことがあります。接客が途切れないと、トイレにも行くことが許されない環境だからです。ぜひJICAさんにも、女性の人権問題としてODA支援してもらいたいものです。

2.日本人のオタク気質

これまでの生活を通して「日本人とは、オタクである」と結論付けました。オタクというのがピンとこなければ、職人気質です。それらを私なりに定義すると「人の評価や自分の立場に関係なく、身を削って細部にこだわり、いいものを作る」という仕事に対する姿勢です。

私は17歳のとき、マクドナルドで初めてアルバイトをした(Vol28参照)のですが、そこではヒエラルキーがしっかりとできており、バイトであっても実に10段階近くの階級があった。ぺーぺーの新人(高校生、時給750円)にとって偉い人(25歳フリーター、時給1000円)は神のような存在であり、ハンバーガー(当時59円)のケチャップの量を1グラム間違えただけで「おまえ、プロじゃねえのかよ?」と脅されました。今思うと、よくも悪くも日本人的な世界だったなあ、と思います。

それは村に住んでいても感じていて、日本人は実に几帳面に記録を取る。よく「○×寺」は○年に火災により焼失。現在の建物は○×により、×年に再建された、とか教科書に載っているでしょう。ちょっと調べてみると、すぐ見つかりました。

法隆寺はその後もたびたび火災に見舞われ、925年(延長3年)には西院伽藍のうち大講堂と鐘楼が焼失。現在の大講堂は、火災から数十年経った990年(正暦元年)のことでした。

法隆寺ホームページより)

・・ベトナムではありえません。「あー古いね。1000年以上前に建てられたよ」で終わります。

もちろんオタク、というか職人の仕事っぷりには日本人として誇りを持ちますが、いつでもどこでも誰にでもそのレベルを求める姿勢は、労働者にとってはきつい環境であると言えそうです。

3.同一性・均質性

これは長くなるので深入りしませんが、農村社会や高度成長期の名残からか、日本人は空気を読むことに長け、共同体から浮くことを極度に恐れます。ネット社会になってもそれは不思議に衰えず「ハブる」というイヤな言葉が私の学生時代には流行りました。

だから、1人だけ有給をしっかり消化すると変な目で見られたり、会社と言う共同体から排除されたりするのです。

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ここまで見てきましたが、いかがでしたでしょうか。最近は、これらに加え、コンプライアンスという怪物も猛威をふるっています。

帰国後、私はこれまでの通り、東京にしがみつくような働き方はできないと思います。だってキツイもの。キツイものをキツイ、と言い切れるだけの自信はつきました。あとは、その現実を踏まえたうえで、どう自分に必要なお金を稼いで、誇りを持って働けていけるのか。ちょっとずつ、考えていきます。

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↓東京で働いていたときよりも、おもしろい生活を送っています。環境を変えると、人生はおもしろくなる。そのための第一歩として、ぜひ青年海外協力隊へ!秋募集開始です(募集要項)。とたまにはJICAの宣伝をしてみます。

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