【Vol163】協力隊員にとってのクーラーというもの

あつい、暑い、熱い。

連日、最高気温は40度になる。しかも湿気がすさまじく、うんざりするくらいネットリとした風が吹く。もっとも、昨年はほとんど死んだようになっていたので、気力を失っていない分、今年のほうがマシである。

ここでひとつ、カミングアウト。私の部屋にはクーラーがある。しかもTOSHIBA製!!

設置してから時間が経っているようで、効きは悪いものの、室温は32度をキープしている(それ以上は上がらない)。

しかし、クーラーというのは青年海外協力隊にとってぜいたく品である。どういうことか。おおっぴらに「私はクーラーがないと寝られません」と言えない「空気」を感じるのだ。アフリカを中心に、停電断水当たり前の任地も珍しくなく、そういった環境を覚悟して応募したんでしょう、という声がどこからかともかく聞こえてくる。

しかし昨年、クーラーなしの生活をしていた私は、かなりキツかった。ほとんど寝られないから、日中もボーっとして過ごすことになる。イライラして、攻撃的になる。運動する気になんか、もちろんならない。ストレス解消はコーラを飲むこと。当然、体調も崩しやすくなり、活動にも身が入らない。

村人はというと、彼らも日中はじっとしており、夜8時ころになってから、ウロウロと外に出てくる。昼間のドンラム村はまるでゴーストタウンのように、誰もいない。みんなどこかうつろな目をして、仕事はおろか、およそ生産的な活動はしていない。

「ここは暑いから、貧乏だから何もできないよ、先進国さん道路ちょうだい。空港ちょうだい。地下鉄ちょうだい」という途上国マインドが形成される過程が、皮膚感覚でよくわかった。

こんな生活を通して、得られたものがあるとすれば、「クーラーは私の人生にとって必要だ」という認識だ。いささか大げさに言えば、夏場の東南アジアでクーラーがなければ、人は自分の人生を主体的にコントロールすることが極めて難しくなる。私は自分の人生を主体的にコントロールしたいから、クーラーは私の人生にとって必需品であるという結論に至った。

協力隊員やそのOBOGと話していると、ときとして会話が「我慢の自慢大会」になる。自分の任地がいかに過酷だったかを、武勇伝のように語る人がいるのだ。でも、大概その話はつまらない。

かに過酷な環境に耐えてきたか、我慢比べのような生活をするよりも、健康体をキープし、ドンラム村の発展、村人の収入向上のためにしっかりとした成果を上げることの方が、いまの私にとっては大事なことだ。帰国後の就職活動で「成果を出すよりも、生きることで精いっぱいでした」と語る隊員がいるならば、そういったタフさは一般企業ではなく、むしろ自衛隊への親和性が高いのではないだろうか。一般企業が求めるタフさやグローバル視点というのは、「クーラーなしで生活できる」「虫さされも気にならない」という類いの生理的欲求に対しての我慢とは相性が必ずしもよくないと、私は感じている。

もしJICAが隊員の帰国後の就職対策を本気で考えるならば、隊員の家には電気、水道、水洗トイレ、温水シャワー、ワイファイ、冷暖房が整備されていることを条件にしたほうがいい。その条件がない中で、いまも世界各国で隊員が行っている試行錯誤は率直に言って、ややバランスを失っていて、ガラパゴス的な努力が多いように思う。もちろん、仲間たちの奮闘ぶりには頭が下がるけれども、夜間に疲れを取ることができなければ仕事どころではないというのは、災害時の避難所の生活を見ればよくわかる。

もっともこれは、私個人、コミュニティ隊員の意見である。人それぞれ、もしくは教育系や医療系の方々は、また違った視点を持つこともあるだろう。議論は歓迎します。

・・・・・・・・・・・・・・・
 たくさんの方に読んでいただけると励みになるので、ぜひクリックをお願いします。ご意見ご感想や、ドンラム村に行きたい!minamiに会いたい!という人がいたら、お気軽にletteraamoroso@hotmail.comまで。メール待ってます。

にほんブログ村 海外生活ブログ 青年海外協力隊へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ ハノイ情報へ
にほんブログ村

・・・・・・・・・・・