【Vol169】信じる勇気(ほのかな光明が見える:前編)

以前も書いた通り、この1-2ヵ月ほど、スランプが続いていた。きょう、少しだけそんなスランプを抜けるようなヒントを得られたので、紹介したい。

キーワードは「信じる」こと。

私たちは無意識に、目の前にいる相手を「信じる」「信じない」という選択を繰り返している。気が合う人は自動的に「信じる」フォルダに入れられ、気が合わない人は「信じない」フォルダに入れられる。「信じる」フォルダに入った人とは気持ちのよい時間を過ごせるし、「信じない」フォルダに入れた人との時間は、一緒にいるだけで苦痛になる。

しかし面白いことに、この割合は、いわゆる「調子」とともに変動する。調子がいいときには「信じる」フォルダに入る人が多くなる。逆もそう。調子が悪いときには「信じない」フォルダに入る人が増える。

ここからが重要だが、前者の時は、幸せな気分になることが多い。調子がいい=信じる人が多い=幸せという図式が成り立つのだ。

そもそも、幸せな気分とはどんな状態なのか。

お互い「信じ合えていると感じられる瞬間」=相互信頼できていると確信している瞬間に、私は幸せを感じる。

では逆に、不幸せな気分とはどんな状態か。

誰かと接した時に「コイツの言うことは信じられないと感じる瞬間」=相互不信の状態は居心地が悪く、不幸せな気分になる。

任地に来たばかりの隊員を例に出そう。環境の変化に対応できない状態が自己防衛を引き起こし「ベトナム人は信じられない!ベトナム嫌い!私は不幸せ!」となりがちだ。しかし帰る頃には「ベトナム人は信用できる!ベトナム好き!私は幸せ!」となることが多い。それはベトナム人が変化したというより、むしろ隊員自身が変化していると考える方が自然だ。現実的に、ベトナム人を嫌いになったままで2年間も過ごすことは難しいし、それでは疲れ果ててしまう。2年間のどこかで我々は「ベトナム人を信じる」という決断を無意識的にせよ、迫られる。その「信じる」という決断の結果、状況が好転し、相互信頼につながり、活動が成功したという例は数多い。

調子の波も、相手の気持ちも、相手との相性もコントロールすることは難しい。だから、まず我々が始めるべきこと、主体的に行うことのできる行動は「信じる」ことだけだ。

そしてそこで「ベトナム人にもいい人と悪い人がいる」という当たり前の結論に逃げてはいけない。相手の属性に関係なく、まず信じる勇気こそが大切なのだ。この点「村人は信じられるけど、配属先は信じられない」という判断をしている私は、まだ改善できる。

もちろん、信じた結果、予期せぬ反応をされるときもある。そこでムカっとしないためには「どう反応するかは、私の問題ではなく、相手の問題だ」という課題の分離の考えが役に立つ。加えて仕事においては、信じて任せた結果、ミスが出たら困ってしまう。私がいう「信じる」ということは、あくまでも、姿勢の問題だ。信じるけど、リスクヘッジはきちんと行う。信じることと、任せることは分けて考えたほうがいい。

また、自分の感情を表明すること自体は悪いことではない。ただしそこはアサーティブに、「私はそう感じた」から「今度からこうしてほしい」と伝えることも押さえておく。

ひとつ例を出そう。配属先から「約束していた仕事ができなくなった」と言われたら、どうしよう。これまでの私だったら「ふざけるな!」となるか、せいぜい怒りを押し殺してその場を離れるだけだった。

そこで「そうか・・残念だけど、これまで仕事を手伝ってくれてありがとう。でもこれからは、できないことは『できない』って、早めに伝えてね。そうしたらよりよい対応ができるから」としたらどうだろう。これを媚びる、卑屈になるわけではなく、主体的に選び取って行うのだ。

あるいはデートの約束をしていた恋人から「急に仕事が入って行けなくなった」と連絡があったとする。最近調子のよいAさんの反応はどうか。「それは大変だね。楽しみにしてたから残念だけど、また今度にしよう。がんばって!」となる。一方、最近調子の悪いBさんはどうか。「何で急にそういうこと言うの?すごく残念な気分。せっかく前から約束してたのに。次はいつ会えるの?」となる。どちらが好印象かは、言うまでもないだろう。

もちろん、人間だから相手を責めるような感情が出てくることは仕方がないが、そこをグッとこらえ、相手を「信じる」ことを意識する。相手を信じれば、自然と相手の立場や感情を慮ったリアクションが出てくる。すると相手も信頼を寄せてきて、相互信頼、引いては幸せにつながるのではないか。

もちろん、調子によって人間関係がうまくいったり、行かなかったりするのは当前のこと。繰り返すが、調子や相手のリアクションはコントロールできないこと。我々が主体的に行えるのは「信じる」ことだけ。だからこそ調子が悪い時、その波に流されず「最近調子悪いな。よし、信じてみよう」と意識する。そんなことを心がけてみたい。

なんでそんなことを考えるようになったか・・・村人と話していて気付きました。長くなるので、後編に続きます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

にほんブログ村 海外生活ブログ 青年海外協力隊へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ ハノイ情報へ
にほんブログ村