【Vol191】2年間を振り返って

最近、最終発表の資料を作っている。自然と2年間の活動を振り返ることになるわけだが、思い返すとターニングポイントになる瞬間があった。

「ひょっとしたらこの配属先、ハズレなんじゃないか?」

ドンラム村に住み始めて、活動を始めて3カ月ほどが経ったころに、そんな疑問が出てきた。何しろ彼らは私に仕事を与えない。「できることを探しなさい」というのが仕事だった。そもそも観光課なのに、英語を話す人もいない。にもかかわらず、事務所では編み物をしたり、携帯ゲームばかりしている。こんなものといえばこんなものなのかもしれないが、度を越してこれはおかしいと感じ始めていた。

ではどうするか。悩んでいた日々の最中、生茶クッキーと出会った。生産者が村の片隅で、細々と売っていたのを見かけたのだ。

一口食べてみると、甘さ控えめで、おいしかった。パッケージの基礎もできていた。

「これは売れる」と確信したが、懸念点があった。「どこで売る?」という問題だ。

ただ私にはアイディアがあった。ハノイで出会った人や、小売店の話を聞くたびに「ハノイには適当な土産物が少ない」という声を耳にしていたからだ。

ハノイの小売店に卸せば、イケるんじゃないか?」

そんな直感が、頭に浮かんだ。

しかし、猛烈な反対にあった。配属先は私がハノイに上京することを快く思っておらず、「村の特産品なのだから、村の中で売るべきだ」と主張された。また、当時の調整員(JICA職員)からは「配属先の言うことに従ってください」「ハノイに行くのは控えて、早く村に馴染んでください」と繰り返し言われた。

四面楚歌に近い状態。そこから私の奮闘が始まった。配属先の意向とは反するので、孤立した。調整員からは、ニラまれた。訓練所生活を共にした同期とは離れ離れになり、友達もいない。村人は親切にしてくれるが、そもそもベトナム語がわからない。この時期が、本当に辛かった。

そんな中、生茶クッキーの生産者に自分のアイディアを披露し、承諾してもらい、ハノイに行商に出かける機会を得た。

初めての営業先はスターロータスさん。まずは20個、トライアルということで購入してもらった。それから2-3日後、電話が鳴った。携帯を見ると、スターロータスさんからの着信だ。まだ最初の取り引きから間もない時期に、何だろう。「トラブルだろうか・・」と覚悟した。

予想は外れた。

「minamiさん、生茶クッキー、大人気です!もう完売してしまいました。次、いつ持ってこれますか?」

一気に力が抜けた。この瞬間、自分の仮説が正しかったこと、仮説を立証するために汗をかいてきた過程が報われたような気がした。この時期、必死の思いでいただいた現金の重みを、私は一生忘れない。

直感は誰にでもある。でも、その直感はか細いものだから「他人の反対」や「所属組織の常識」といった壁に跳ね返され、実証しようと動くことは簡単ではない。でも私は、私の直感に賭けてみた。当たり前だ。30代の男が、2年間かけて人生をプレゼンテーションしようとしているのだ。サボってばかりの配属先や、どんなキャリアを持っているかもわからない調整員の意見を黙って聞いているわけにはいかない。

これで流れが変わった。結果を出したことで生産者と私の関係は強固なものになり、配属先や調整員は私に対し、それほど表立っては口を出さなくなった。何よりも私自身のメンタルが変わった。自分で自分の活動を切り開いていく苦しみと、それを上回る快感を知ってしまった。これを機に私は、ガツガツ自分で活動を模索していくことになる(以下次号)。

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