【Vol192】仁義を切る、ということ

このところ、個人的に苦い経験があったので、紹介したい。

先日、旅行会社に勤めるAさん(日本人)に、スタディーツアーを企画してもらうため、ドンラム村の案内をした。その後、企画作りの助けになればと思い、近隣の障害者施設を訪れ、そこで活動する協力隊員Bさんのことを紹介したのだ。それ自体は無事に終わった。

残念ながらその後、Aさんからは特に連絡がないため、話は流れたのかと思っていた。

ここまではよくある話だ。

しかし最近になって、Bさんの後任にあたる協力隊員のCさんから、Aさん及びAさんが連れてきた学生数名を、当該障害者施設に案内したということを耳にした。

もっとも、Cさんへの事前連絡はなかったという。Cさんは直前になって突然、案内の依頼を受けたのだ。このような場合、Cさんからみれば、JICAに対してどう報告すればいいか、そもそもよくわからないままに案内を受けてしまっていいものなのか、赴任直後ということもあり、JICAと配属先との間で困惑してしまった様子が見受けられた。

Cさんは優しい人だから、突然のことでも対応してくれたらしい。Aさんや学生さんも満足して帰ったということだ。でも、それでよかったとは済ませられない問題だと、私は感じた。

その後私は、Aさんにどういうことか質問のメールを送り、結果的に彼女に迷惑をかけてしまったことに対して、抗議の意を示した。Aさんを紹介した私にも責任はあるし、今後のこともあるから、自分の意思をはっきり伝えた。

推測するに、Aさんから施設には連絡がいっていたものの、施設担当者からCさんへの連絡がうまくいかなかったのだろう。だからAさんからすれば「ちゃんと連絡したのに・・」となるし、Cさんにとっては「突然来られても・・」となってしまう。

もっとも、いかなる理由があろうとも、そもそもの原因を作ったのはAさんサイド。私からすれば、Aさんからひとこと「こんど、紹介いただいた障害者施設を訪れます。ありがとうございました」という連絡をもらいたかった。もし、事前にそうした連絡をもらっていれば、「いまはBさんは帰ってしまっていますし、後任のCさんは赴任直後です。障害者施設とCさんとのコミュニケーションはベトナム語オンリーのため、緊密にできているとは思えません。そうした案内は、結果的にCさんの負担になる可能性があります。だから念のため、JICAにひとこと連絡しておいたほうがいいです。担当者の連絡先を教えます・・」などとアドバイスし、トラブルを避ける工夫ができたのだが・・。

しかしAさんは私に、こう反論した。

「私は(通訳を通して)施設にはしっかり事前連絡を入れた」

「minamiさんは施設とは関係ない人なので、報告する義務はないでしょう」

「施設の方はみなさん、とても喜んでいました」

「そもそも訪問者が増える、日本人に知ってもらうのはいいことでしょう」

・・・どうだろうか。(仕事ができる人の発想かどうかはともかく)Aさんは必ずしも、間違っているとはいえない。Aさんにとっては、ミスはしていない、という認識なのだろう。

しかし、論理と感情の面で、これは問題がある対応だ。

論理とは、先ほど述べたこと。ひとこと私に連絡をいれていれば、Cさんへの対応がもう少しうまくできた。そうすれば急な施設訪問にはならず、Cさんを困惑させることもなかった。

感情とは、「紹介」という行為に対してだ。紹介してもらった人と何か一緒に仕事を進めることができたならば、ひとこと紹介者に「ありがとうございました。おかげさまでうまく仕事を進めることができそうです」と連絡を入れるのが私にとっての常識だし、そうした行為の積み重ねが、信頼につながる。これを古い言葉で「仁義を切る」と表現する。

しかしAさんは、私の言っている意味が最後まで理解できなかったようだ。結果的にCさんに迷惑をかけてしまったことについては謝罪していたが、それが私への仁義を切るということにどう関連しているのか、わかっていない様子だった。だから「minamiさんに報告する義務はない」なんてことを口にする。そこまで言うなら、絶対に、誰にも迷惑をかけてはいけないという能力と覚悟が必要なのだが、そんなものはない。だから、何気なく人を怒らせてしまう。

そもそも、通訳に頼らざるをえない時点で、不確定要素が増えるのだ。それを「通訳には伝えたのだから私に非はない」「目的は施設訪問であり、隊員訪問を目的とはしていないのだから、施設に連絡すれば十分だ」と思っているとすれば、認識が甘い。通訳を使って何かをしようとするとき、自分の行為が他人に何をもたらす可能性があるのか、それを避けるためになにをすればいいのか、想像力が欠けている。

結局、私は旅行会社に訪問先の候補地を与えてしまったことになる。別に出し惜しみするものでもないのだが、お人よしもほどほどにしないと、結局イヤな思いをすることになる。自分も他山の石にして、気をつけよう。

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