【Vol201】マザーハウス・山口絵理子さんの本を読んで

帰国して2ヵ月。JICA=国際協力=社会企業という観点から、マザーハウスという会社の名前は見聞きしていた。マザーハウスをひとことで言うと、途上国でしっかりとしたモノづくりをして、日本で売るというビジネスモデルをしているバッグ屋さん。友人がその店舗で働いていこともあり、いちど店舗に行き、創業者・山口絵理子さんの本を読んでみることにした。

店舗は、新宿の店舗に行ってみた。小さな店舗だが、接客の感じがいい。マニュアルというよりも、お客さん本人を見て話しかけているような気がする。スターバックスに似ているかもしれない。

商品については、モノはいいのだろう。ただ、バッグというのは使ってみないとわからない面が多いので、まだわからない。

さて、本である。私は興味を持った人がいたとき、その人が書いた文章、できれば書籍からその人を知るアプローチを取る。もちろん対面して話すのが一番だが、そうもいかないので、まずは本を読んでその人の人となりを知るのだ。

さて、著者であり、マザーハウスの社長である、山口絵理子さん。

ひとことで言えば、「恐れを知らない、アグレッシブな人」という印象だ。これは「積極的」「明るい」「挑戦」というポジティブな評価と、その反面「強引」「稚拙」「感情的」というマイナスな評価、両方の印象を私は持った。

ポジティブな面は、こうとと決めたらわき目も振らず、紆余曲折ありながらも成し遂げてしまう能力だろう。それは会社がここまで大きくなり、多くのファンがいることという結果が、何よりも雄弁に物語っている。

さて、ネガティブな面。気になったのが、現地バングラデシュにいるキーパーソン(工場の現場責任者)が、次々と敵対的な関係になって彼女の元を去っていったことだ。そのエピソードに、彼女の稚拙さ、強引さ、感情的な部分が顔を覗かせる。

例えば、アティフさんというマネージャー。あるとき彼女は、彼に惚れ込み、マザーハウスの事業に力を貸してほしいと頼み込む。「次の日も、そしてその次の日も、毎日彼の事務所を訪れては、会議が終わるまで待ち伏せをして(中略)熱く説明した。そして、いつも私は言った。『会社が次のステージにいくためには、アティフさんの力が必要だ』彼は嬉しそうに笑っていたが、イエスとはなかなか言ってくれなかった。しかし、一週間後、私があまりにもしつこかったのか、彼が言った。『急には無理だが、自分が持っている時間の50%をマザーハウスのために使うと言ってくれた。私は飛び上るほど嬉しかった。50%でも何でもよかった。一度イエスと言われれば、後はなんとでもなると思った』

しばらく時間が経ち、会社にトラブルが降りかかる。そんなさなかにアティフさんが、彼女のもとを去ってしまう。そのエピソードについて、彼女はこう書く。「それは突然だった。(中略)いきなり現地を統括するディレクターのアティフが『会社を辞めなければならない』と言ってきたのだ。(中略)すべてにおいて全幅の信頼を置いていた。そんな彼が、突然言い出した『会社を辞める』という言葉には、予感がないわけではなかった」。失意の彼女に、悪いことは重なる。アティフさん主導で契約した工場のオーナーから、突然出て行けと要求されるのだ。地べたに座り込み「こんなこと、絶対に許されないだろう!」と叫ぶ彼女。

・・私は彼女に同情できなかった。なぜなら、すべてが自分中心で、強引な考え方、行動をしているからだ。「アティフが突然辞めると言いだした」と彼女は強調するが、これは身勝手な物言いであろう。彼から見れば待ち伏せまでされ、しつこく頼まれたから引き受けたに過ぎないと推測できるし、「一度イエスと言われれば、後はなんとでもなると思った」という言葉には、相手を尊重し、思いやる気持ちが見えてこない。一方的に悪者にしている工場のオーナーとも、ふだんから個人的な信頼関係を築く努力をしていたとは思えない。

もっとも、そこで恨み節ばかりで終わらず、また次々に人を巻き込んで事業を進めていくのが、彼女のすごいところである。また「人を雇う」ということに対して、何の気負いも感じられないところもすごい。私は小から大に進めるタイプなので、大から気負いなく始められる彼女のメンタルがうらやましく、また危うくも感じる。

さて、彼女の原体験はバングラデシュであった。私の場合、それはベトナムである。本を読んで、バングラデシュベトナムの違いについても、いろいろと思うところがあったので、それはまた次回。

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